鮨 くら竹
鮨職人・倉橋晃規さんが握る鮨は繊細かつおおらか、彼の人柄そのものである。江戸前の仕事に固執しすぎることなく、目の前の客に呼応するようにフレキシブルに姿を変える。修業時代に鍛えられたのは鮨を握る技量や怒涛の客捌きだけではない。抜群のコミュニケーションセンスにもさらに磨きがかかったようである。
女性客が増えたためかシャリはわずかに小さく洗練され、酒をじっくり楽しむ客のためにつまみの幅も広がった。足繁く通う客には少し目先の変わったものを出したいという欲もある。彼の鮨は独自の味と姿を形成しながら軽妙に進化し続けているのだ。東京で3軒の鮨屋を渡り歩き、金沢に戻った後はミシュラン一つ星店で修業。やがて系列店を任されるまでになり、2016年に独立し香林坊に『くら竹』を開店。2019年には街の喧騒から少し離れた現在の場所「Labo白菊」に移転した。今ではすっかりトレードマークとなった深い海を思わせるブルーの鮨皿は、陶芸家・川崎知美さんによるものだが、これも人を大切にする彼が引き寄せた縁によるもの。
移転して1年後にはコロナ禍に見舞われるが、倉橋さんにとっては鮨を介して客との繋がりを再確認する貴重な機会になったという。「ゆったりとした空間の中で、ゆっくり鮨を味わっていただきたいと思ってきましたが期せずして叶いました」とあくまで前向きだ。10席あったカウンター席を8席に減らした『くら竹』では、以前にも増して倉橋さんとの対話を楽しみ、鮨や酒を堪能する客の嬉しそうな姿が見られるようになった。世の食通たちは贔屓の店を秘密にしたがるものだが、この店の常連たちは彼を応援したい気持ちが勝ってしまうようで、つい席の競争率を上げてしまう。店主も客もつくづくお人好しなのである。
10名以上の団体予約があれば定休日でも営業を行うなど、店舗としての対応も非常に柔軟。オーナーの柿谷さんは「いろんなシーンで焼肉を楽しんでもらえるよう郊外にも店を構えました。ご相談をいただければ可能な限り対応しますよ」と語る。競争率の高い郊外焼肉の中でも『万場』の名は遠くまで響き、その評判を広めている。
【特典】
ウニイクラの小丼