四季料理 はる馬
田上本町の少し高台にある、清雅な店構えに白い暖簾が映える日本料理店『はる馬』。評判の料理は、四季折々の彩りを生き生きと表している。「食材は捨てないです。捨てるところがない」と、笑顔でさらりと言い切る店主の上田芳治さんは、調味料の一部までを自家製する妥協知らずの和食料理人だ。刺身に合わせる醤油ひとつをとっても独自に調合したり、タマネギ醤油やゴボウ醤油などを試したりして、新しい美味しさを追い求め続けている。
修業先の料亭で料理人としての礎を築き、姉夫妻と共に立ち上げた居酒屋『馬づら』では客の要望を身近で感じとりながら、料理人としてあるべき姿を模索。2012年に自身の店を構えた後は調理場に女性板長を据え、自らも包丁を握り切磋琢磨しつつ、女将の里佳さんと共に店全体にも目配りしてきた。店の隅々にまで澄んだ空気が行きわたり、もてなしの息づかいが感じられるのは、上田さんの真摯な姿勢による賜物である。
料理は、器選びやあしらいにも心が砕かれた月替わりのコースのみ。先付から食後の甘味に至るまで山海の恵みが余すところなく生かされており、美しい流れで五感を刺激する。昼時ともなれば女性客が9割を占めるというのも納得だ。加工品などは一切使わず、保存食や珍味の類までを自家製し、手間暇かけることを厭わない。こうした和食料理人としての矜持が、食都金沢に生きる地元客に長く静かに支持されるゆえんだろう。
【特典】
コース料理にあった日本酒(4合瓶)
または白ワインボトル