時しらず
鞍月で開業するや、いつの間にか隠れた予約困難店となり2019年に増築したにもかかわらず、依然、平日でも予約がとれない日があるというから驚きである。新山さんは「うちの店は肉の種類も決して多くはないですし、特殊な肉を仕入れているわけでもない、普通の焼肉屋ですよ」というが、焼肉激戦地・金沢市で、リピーターを増やし続けることは決して簡単なことではない。「お客さんが満足してくれて、スタッフや取引先に支払いができて、この仕事を続けていければそれで満足。特にこだわりとかはないです」と微笑むが、コスパやサービスの良さを熱烈に支持するファンは多い。聞けば、肉は部位ごとに仕入先を変え、ほとんどの肉はタレか塩を選べるようにしており、シロは生で取り扱いをしている富山の専門店から週に2度入荷。切った肉はその日のうちに使い切ることをモットーとしている。こうしたことの全てが「時しらず」ではごく自然で当たり前のことなのだ。サイドメニューもあれこれ頼める絶妙な値付けで、会計時の満足度を後押ししている。店主の謙虚で誠実な人柄と商売っ気のなさが客を惹きつけ、再訪率の高さに繋がっているのだろう。店名には「時を忘れて楽しんで欲しい」という思いが込められているが、常連客の間では「何時も知らず知らずのうちに足が向く店」として、潜在意識に刷り込まれているに違いない。
【特典】
ボトルワイン1本